6月に(株)SCREENホールディングス(京都市上京区)の代表取締役 取締役社長兼CEOに就任した後藤正人氏は、半導体製造装置事業(SPE)で長年キャリアを重ね、事業会社SCREENセミコンダクターソリューションズの社長として業績改善に成果を上げた。グループトップに就任し、全社のさらなる成長に向けた戦略の策定に着手する。足元の状況および中長期の方針について話を聞いた。
―― SPEでは採算性の改善に貢献した。
後藤 従来、顧客に応じて製造を行っていたため効率に問題があった。設計の標準化や顧客パッケージの先行的な手配など、受注に先んじて用意しておく取り組みを推進した。これにより在庫やリードタイムを改善し、社長在任の5年間で収益性を大きく向上させることができた。その後、全社の経営を見る立場となったが、SPE以外は畑違いの事業でもあるのでそれぞれの状況を自分で見て課題解決を図りたい。
―― 2025年度は減収減益を計画する。
後藤 SPEは前年度に中国で前倒し需要があった反動でスロースタートとなっており、先行きも不透明感が強い。上期の終わりごろには見通しが立ってくると考えている。米国の関税施策は、印刷関連機器事業(GA)のみ直接的な影響を受けるが、間接的な景気減速も懸念だ。一方、AI半導体の拡大見通しも出てきており、プラス影響が期待できる。
―― 中国ではローカル装置メーカーが台頭している。
後藤 ローカルメーカーの成長は著しいが、当社は先端ロジックで強い競争力があり、今後も安定成長を見込む。ローカルに対する優位性を保てるように、先端技術でリードしていく。
―― SPEでの具体的な取り組みを。
後藤 主力の洗浄装置は新規プロセスへの対応に加え、環境負荷低減に寄与するエコ機能で高付加価値化を図る。先端ロジックとともに注力するパワー半導体は足元の市場が鈍化しているが、将来にわたり重要な分野であることに変わりはないため引き続きフォーカスする。
また、後工程領域への展開を目指している。直接描画や塗布といったグループが持つ要素技術を展開する。NEDOプロジェクトではウエハー接合装置の開発にも取り組む。次世代パッケージの市場が本格的に立ち上がる30年ごろに向け、製品投入を図っていく。現在は当社およびグループ各社で取り組んでいるが、後工程領域としての事業効率化も将来的には検討課題になる。
―― ファインテックソリューションズ(FT)やプリント基板関連(PE)は。
後藤 FTは中国でFPDが持ち直しているが、高成長は見込みにくいので一定のボリュームを押さえていく。他方で、水素デバイスなどでFTが持つコア技術の応用を進める。PEは直近の市場が鈍化しているが、次の成長期にシェアを押さえるため新製品を投じていく。
―― 半導体やFPDのインドへの展開は。
後藤 インドでの生産具体化にはまだ時間を要しそうだが、期待される市場なので注視していく。
―― 滋賀県野洲市で新拠点の用地を取得する。
後藤 将来的なSPE事業などの拡大に向け、確保を決めた。26年の取得完了を予定し、具体的な活用法を詰める。既存の主力拠点である彦根事業所(滋賀県彦根市)とともに滋賀県内の拠点となるが、当面は効率の観点から近くが適切と判断した。また装置のブラックボックス化の観点から、海外で生産を行うことは考えていない。
―― 海外では新研究開発拠点の設立を計画する。
後藤 具体的な場所などはまだ非公表だが、次世代デバイスの開発に向けて先端プロセスの情報をいち早く得るのが狙いだ。海外での人材獲得や人材交流促進でプレゼンスを高める効果も期待する。
―― 中長期的な方針について。
後藤 24~26年度の現行中期経営計画は、初年度の好調により2年目の踊り場を経ても当初計画は達成できるとみている。市場が落ち着いたタイミングで27年度以降の次期中計に向けた戦略策定に着手する考えで、設備投資や研究開発、戦略投資の方針を詰めていく。新規事業は候補となるものをリスト化しており、M&Aも視野に入れて投資計画を決めていく。
既存事業では、GAのデジタル印刷機の販促やオンライン化への対応などが課題になる。
―― 全社の今後のビジョンを。
後藤 23年に策定した存在意義「人と技術をつなぎ、未来をひらく」の通り、人づくりをきちんとやっていくため必要なところは変え、人的投資を進める。人材への投資こそが、会社の成長につながると考えている。
(聞き手・副編集長 中村剛)
本紙2025年8月14日号1面 掲載