電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第647回

日本AMD(株) 代表取締役社長 ジョン・ロボトム氏


サーバー向けでシェア拡大
2nm品は26年以降に出荷

2025/10/10

日本AMD(株) 代表取締役社長 ジョン・ロボトム氏
 サーバー向けCPU・GPU、デスクトップ・ノートPC向けCPU、ワークステーション(WS)向けCPU、ゲーム関連GPU、FPGA、組み込み向けCPUなどを手がけるAMD(米カリフォルニア州)。近年の業績は絶好調で、半導体業界で破竹の勢いを見せる。ライバルのインテルにも攻勢をかけており、サーバー向けCPU市場で41%(2025年4~6月期)のシェアを獲得し、同社においてデータセンター・組み込み製品の売上高は全体の63%(24年実績)を占めるまでになった。日本AMD(株)(東京都千代田区)の代表取締役社長で、AMDコーポレート・バイス・プレジデントのジョン・ロボトム氏に聞いた。

―― 最初にご略歴を。
 ロボトム 日本で生まれ豪州で育った。豪州の大学を卒業後、豪州でフォード・モーター・クレジット・カンパニーに入社し、プログラマーとしてクライアント・サーバーやメーンフレームの開発などに携わった。その後、豪州でサン・マイクロシステムズに転職し、セールスオペレーションマネージャーとしてセールス寄りの業務に就いた。サン・マイクロシステムズを一度退職し、04年に来日して日本のサン・マイクロシステムズに入社。以降、日本のブラックロック、デル、マイクロソフト、レノボ・エンタープライズ・ソリューションで要職を歴任した。そして23年6月にレノボの社長兼ゼネラルマネージャーを辞し、23年8月から現職に就いた。

―― 製品戦略は。
 ロボトム ラインアップは豊富だが、競合他社と戦える分野として注力している1つがサーバーだ。製品としては、CPU「EPYC」とGPU「Instinct」で、後者はAI時代のキープロダクトとして位置づけている。いずれも高性能ながら優れた電力効率を有するため、電力消費量を大幅にセーブできるほか、余剰電力でAIワークロードを強化できる。
 EPYCは17年に正式発表した製品群で、デスクトップ・ノートPC向けCPUなどと共通の「ZENアーキテクチャー」に基づいている。最先端は第5世代で、TSMCの4nmノードや3nmを採用している。26年以降は2nmを採用した第6世代を出荷する計画だ。競合他社に対する強みは、ファブレスによる微細化プロセスへのアクセス。チップレット構造によりコア数、キャッシュ容量、バンド幅などを自由に設計できるのも強みだ。
 一方、Instinctは「CDNAアーキテクチャー」がベース。6月にリリースした「MI350」は、CDNA4、TSMCの3nm・6nmFinFETプロセスに対応する。スペック面で優れ、かつ様々な大規模言語モデルを用いた高い推論能力を発揮する。26年はスペックや推論能力をさらに高めた「MI400」を出荷する。また、AIワークロード設計にはライセンス不要で、数々のライブラリをサポートするオープンソースソフトウエア「ROCm」を提供する。GPUを効果的に活用することで推論性能を大幅に向上できる。

―― デスクトップ・ノートPC向けCPUなどは。
 ロボトム デスクトップ用「Ryzen」、ノートPC用「Ryzen AI」、法人用「Ryzen AI Pro」、WS用「Ryzen Threadripper」を製品化している。「Ryzen AI/AI Pro」はCPU、GPU、NPUをワンチップ化したAI CPUで、高性能と優れた電力効率を特徴としている。

―― 日本市場に向けた取り組みを。
 ロボトム 医療機器、産業機器や宇宙・防衛向けの組み込み製品で広く採用されている。最近ではSUBARUの自動運転支援システム「アイサイト」向けSoC、KDDIの5G仮想化ネットワークや日産自動車の車両衝突試験ワークロードにEPYCが採用されるなど大型案件を獲得している。今後はグローバルほど採用が進んでいないサーバーやPC向けを強化していく方針だ。その際にカギとなるのがAIと考えており、EPYCやRyzenでいかにコストダウンできるかなどを提案している。リソースを拡充し、販売パートナーと連携しながら顧客から選択される取り組みも続けている。


(聞き手・東哲也記者)
本紙2025年10月9日号1面 掲載,

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