電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第673回

推論分野移行でNPU時代が到来


韓国新興3社に注目

2026/10/2

 AIインフラ投資がこれまでの学習から推論分野へ移行していることから、韓国NPU(ニューラルプロセッシングユニット)企業が注目を集めている。これまで生成AI市場は、大規模データを活用してAIモデルを作成する「学習」段階が中心であった。膨大な演算能力を必要とする学習市場において、エヌビディアのGPUは事実上のグローバル標準としての地位を確立した。

 しかし、AIサービスが産業現場や日常生活に広がるにつれ、すでに作成されたAIモデルを実際のサービスで実行する「推論」市場の重要性が急速に高まっている。推論プロセスでは学習段階とは異なり、電力効率やコスト、処理速度などが重要である。そのため、特定のAI演算に特化したNPUが、GPUを補完したり一部の領域では代替する可能性も高まっている。特にNPUは、単にGPUに比べてコストを下げる代替半導体という意味を越え、データやコンピューティングインフラ、AIサービスの運用基盤を自国技術で確保するための基盤として評価されている。

 米国と中国を中心に技術競争が激化し、各国が「Sovereign AI(ソブリンAI)」の構築を加速させるなか、国産AI半導体の開発に向けた取り組みも拡大している。特定の国や企業の半導体およびコンピューティングインフラへの依存度を下げようとする動きが広がれば、NPU企業には新たな市場参入の機会が生まれる可能性がある。

 韓国内では、リベリオンやFuriosa AI、DEEPXなどが、自社設計技術を基盤にAI半導体市場を攻略している。一部の企業は製品の商用化を経て海外市場への進出を果たし、技術開発中心だったAI半導体産業も本格的な事業化の段階へ移行している。

リベリオン、主力製品の採用先拡大へ

 リベリオンは、公共・通信市場で実績を確保すると同時に、米国などの海外データセンターやAI推論インフラ市場へと事業領域を拡大している。直近では総額6400億ウォン規模の新規株式公開(IPO)に向けた資金を獲得し、企業価値は3.4兆ウォンに達するなど、グローバル事業拡大のための資金確保にも加速している。

 主力製品であるアトムマックス「ATOM-Max」は、大規模なAI推論に特化した構造で、優れた演算性能と高帯域幅メモリーへのアクセス性能を兼ね備えており、複数のNPUを束ねて運用できるよう設計されている。リベリオンは「国産NPUベースの公共AI CCTVへの転換」事業を通じて、韓国慶尚南道庁と蔚山広域市CCTV監視センターにアトムマックスを供給している。また、韓国KTの法人向けソブリンAIアプライアンス「KT NPU LLM Station」にも、アトムマックスが搭載されている。

ATOM-Max加速器を搭載した高集積のAIサーバー
ATOM-Max加速器を搭載した高集積のAIサーバー
 今後の課題としては、公共および通信事業者から得た経験を活かして海外データセンターの受注につなげることだ。GPU中心の市場において、推論用NPUがコストと電力効率を強みに競争力を確保できるかがカギとなる。

Furiosa AI、スウェーデンDC攻略

 Furiosa AIは、第2世代NPU「Renegade(RNGD)」の量産と供給拡大に注力している。韓国政府の国民成長ファンドと民間資金を基盤に、約8000億ウォン規模の投資と3兆ウォンの企業価値と評価されており、量産と海外事業拡大のための資金確保にも取り組んでいる。

 RNGDは先ごろ、サムスンSDSのサービス型NPU(NPUaaS)に搭載され、企業が必要に応じてNPUリソースを利用できるサブスクリプション型AIインフラ市場にも参入した。海外では、米国のAIインフラ企業であるI/ONX HPCおよびデータセンター運営会社のVeloxとともに、スウェーデン・ストックホルムにおける15メガワット(MW)級のAIデータセンタープロジェクトを推進している。第1段階としてRNGDを1800枚供給し、拡張過程で8800枚以上を追加投入する計画だ。

DEEPX、エッジAI半導体技術を展開

 DEEPXは、リベリオン・Furiosa AIとは参入市場が異なる。DEEPXが狙っているのは、大規模データセンターではなくカメラやロボット、産業機器、エッジサーバーなど、現場でAI推論を行う「エッジAI」を主要市場としている。主力のNPU「DX-M1」は、5nmプロセスをベースとした超低電力AI半導体。25TOPSの演算性能と3~5W水準の低電力駆動を目指して設計されており、セキュリティーカメラ、産業用コンピューター、ロボット、ドローン、スマートファクトリー機器、エッジサーバーなどに適用することができる。

DEEPXの製品群
DEEPXの製品群
 直近1年間で10カ国以上から77件を受注。累計受注額は1300万ドルに達しており、今後大きな伸びが予想されている。次世代製品として、サムスンの2nm GAA工程採用の「DX-M2」を開発中であり、5W以下の消費電力で最大80TOPSを目指している。端末から小型LLMを駆動するような用途まで視野に入れており、27年からの量産を予定している。

 上記3社はそれぞれ、データセンター・企業向けAI、海外AIインフラ、エッジAIなどという市場を分けて存在感を示しているが、今後市場での競争力が保証されているわけではない。消費電力や総所有コスト(TCO)、遅延時間、処理量だけでなく、ソフトウエア互換性などの課題も立証しなければならない。今後数年の動きが、韓国産NPUの商用化可能性を左右する重要な時期になるだろう。


電子デバイス産業新聞 編集部 記者 嚴 智鎬

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