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第701回

AGC(株) 電子カンパニー 電子部材事業本部 開発室 室長 前田昌展氏


光電融合を材料で牽引
素材から加工の一貫性が強み

2026/10/30

AGC(株) 電子カンパニー 電子部材事業本部 開発室 室長 前田昌展氏
AIデータセンター(DC)の高負荷化で光電融合技術の重要性が高まっており、CPO(Co-Packaged Optics)導入に向けて光配線、材料、光学部品の高度化が進められている。光電融合を支える研究開発や製品展開などについて、AGC(株) 電子カンパニー 電子部材事業本部 開発室 室長の前田昌展氏に伺った。

―― 貴社の取り組みに関する経緯からお願いします。
 前田 当社は、データ通信量の増大に伴い、電気配線だけでは伝送損失や消費電力の増加への対応が難しくなるとの認識から、シリコンフォトニクスを含む光接続技術の研究開発に長年取り組んできた。ムーアの法則の限界が指摘され始めた段階で、半導体の進化は前工程の微細化だけでなくパッケージ側の高度化も進むと判断し、ガラスキャリアやガラスコア基板などアドバンスドパッケージ技術の開発を進めてきた。こうした取り組みの延長線上でシリコンフォトニクスの活用が進むと判断し、CPOもその流れのなかに位置づけている。

―― CPO向けの製品展開について。
 前田 第1世代のCPOはパッケージ基板の端まで光配線を引き込む構成で立ち上がりつつあり、次世代ではインターポーザー近傍まで光配線を引き込む構成や、パッケージ基板全面に光配線を形成するという構成も検討されている。当社はガラスと有機材料の両方を保有しており、マイクロレンズアレイ(MLA)やガラス/ポリマーの光導波路を展開する計画だ。CPOはネットワークスイッチから立ち上がるとみられ、第1世代向けで当社が貢献できるのが光学結合部品のMLAだ。

―― MLAの特徴を。
 前田 すでに他の用途向けで量産実績があり、CPO向けにはプリズム一体型についても提案している。CPO向けは既存製品より小さく、ハンドリングが大変難しいものの、当社は長年の知見によりクリアしている。当社製品は位置合わせの容易さや安定した結合状態の確保に寄与することで、さらなる損失を防ぐことができる。
 MLAは、グレーティングカプラが設計上持つ最大結合効率(理論値)を発揮できるように、光を最適な形で届ける前段部品だ。第1世代では結合損失が課題となっており、位置ずれによる損失増を防ぐにはMLAの高精度加工が不可欠だ。当社は顧客ニーズによって複数の製法を使い分けており、半導体プロセスに近い製法においては、アレイのなかのチャネル間の位置精度が極めて高い製品を提供できる点が強みだ。

―― 導波路について。
 前田 現在はポリマーの光導波路を提案している。DCで用いるシングルモード光ファイバーは、127μmピッチから縮めることが難しい。一方でPIC(Photonic Integrated Circuit)側は、入出力構造のチャネル間隔を20μm程度まで縮小できる。この不整合を解決する手段として、ポリマー光導波路が形成された光配線を用いて、127μmから20μmへのピッチ変換を担う。リボン状の導波路材にパターンを形成し、ファイバー光を効率的にPICへ導く部材だ。
 当社のポリマーは感光性を持ち、半導体プロセスで微細パターンの形成が可能な点が特徴だ。ポリマー材料だが260℃リフローや高温放置、強レーザー照射でも特性変化が無く、耐熱性とレーザー耐性を確保している。導波路自体の伝搬損失は0.25dB/cmと低く、公開情報の範囲では業界でも低損失の水準にある。ポリマーに±1~2μmの位置精度やタイトなコアピッチを形成できる点や、光吸収を抑えつつ微細加工性を両立した材料設計ができることも、他社にないアドバンテージと自負している。ガラス導波路は長距離伝搬・高耐熱で有利で、用途に応じてすみ分けされるとみている。

―― 将来の展開については。
 前田 個片導波路に加え、基板全面に光配線層を形成するフィルム型導波路も提案している。パッケージ基板のさらなる大型化により、基板全体を光で配線する「光電融合基板」の構想が進められている。基板全面配線では、0.1dB/cmの改善が10cmで1dBの差となるため、当社ではシリコンナイトライド導波路に匹敵する低損失化を目標に材料組成の最適化を図っている。耐熱性、光透過性、低損失、量産再現性を同時に満たし、量産段階でのパターン安定性を確保する材料設計はハードルが高いが、有機・ガラスの両材料を保有する強みを活かし、素材、設計、加工を統合した総合力で、お客様への提供価値をさらに高めていく。



(聞き手・澤登美英子記者)
本紙2026年10月29日号10面 掲載

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