電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第145回

(株)堀場製作所 代表取締役社長 堀場厚氏


通期売上は予想以上の1750億円
半導体・自動車の両輪が伸びる
英MIRA社買収の効果期待

2015/11/13

(株)堀場製作所 代表取締役社長 堀場厚氏
 (株)堀場製作所(京都市南区吉祥院宮の東町2、Tel.075-313-8121)の2015年度(12月期)売上高は前年度比14・3%増の1750億円に達する見込みであり、1~9月は売り上げおよび純利益が順調に推移している。半導体分野と自動車計測分野の両輪が好調に業績を積み上げており、一方で、円安傾向で118億円の増収となり、前年同期比で51・5%増を達成している。
 自動車計測システム機器事業においては英MIRA社の事業買収に成功し、自動運転など次世代モビリティー開発などの最先端分野で事業拡大が十分に見込める体制となった。半導体分野ではマスフローコントローラーの世界市場シェアが直近で52%まで拡大し、半導体製造装置向けの販売が堅調に推移している。同社を率いる堀場厚社長に最近の事業環境と今後の見通しについて話を伺った。
 
 ―― 創業者の堀場雅夫さんが7月に逝去されましたが、思い出に残っていることは。
 堀場 私の父である堀場雅夫は京都大学に在学中から堀場無線研究所を創業し、学生ベンチャーの草分けと呼ばれた。「おもしろ おかしく」を社是として堀場製作所を発展させ、ベンチャービジネスのモデルとも言われる企業を作り上げた。私にとってはとても優しい人であり、面白い人であった。言葉遣いや礼儀、時間には厳しかったが、小さいころから大人の世界を見せてくれた。そうした父の元で育った私は、米国でライセンスを取りカーレーサー、さらにはパイロットを目指したが、結果的には社長として堀場製作所を指揮することになった。今でも父の残してくれた堀場スピリッツを私も継承し、社員も引き継いでいかねばならないものだと思う。
 
 ―― 業績は好調に推移していますが、危機感が足りないとのお考えですね。
 堀場 先輩たちが築いた過去の資産に頼りすぎている感がある。最近の社内の傾向は、問題提起できる人が少なくなっていることだ。偏差値教育の弊害が出ている。マニュアル人間が多すぎる。そうした危機感からBIWAKO E-HARBORと呼ばれる新工場を滋賀県大津に100億円を投じて建設した。本社におけるモノづくりの難しいものから先にBIWAKO E-HARBORに持っていく。現状に甘んじることなく、いつでも自己批判する厳しさがこれからの堀場にも必要だと切に思っている。
 
 ―― M&Aの大型案件としてこの夏に英MIRA社を買収しましたね。
 堀場 堀場の自動車計測システム機器事業は、世界的に高いシェアを有する排ガス計測ビジネスに加え、05年にはエンジン計測装置などのビジネスに展開してきた。今回のMIRA社買収で車両開発事業やテストコースを使った車両試験領域へ事業を展開できる。買収金額は155億円であるが、シナジー効果は非常に高いと見ている。
 
 ―― 自動車分野はやはり伸びていますね。
 堀場 15年度通期で665億円の売り上げを予想しており、1~9月は前年同期比17・5%増という結果になった。国内外の自動車メーカーによる研究開発費は堅調であり、部品メーカーなど1次サプライヤーからの需要も増加している。BIWAKO E-HARBORとMIRA社買収の二大投資により事業強化を図れる体制が整った。最新の車両技術に対するシステムソリューションおよびエンジニアリング、テスティングの能力は強烈に上がってくると見ている。
 
 ―― 半導体分野も急速な伸びを示してきましたね。
 堀場 半導体分野は通期売り上げで350億円を見込んでいる。1~9月の実績は実に前年同期に比べて38・8%増を記録した。マスフローコントローラーの世界市場シェアは09年当時の40%から直近では52%まで伸びてきた。台湾、韓国を中心としたアジアでデバイスメーカー向けに増収が図れたのだ。マスフローコントローラーの生産はこれまで絶好調で推移してきたが、中国経済の低迷により下期は少し不透明要素が増えており、予断は許されない。
 
 ―― 期待している医用分野の現状は。
 堀場 15年度通期では280億円の売り上げを計画している。残念ながら、こちらの期待どおりには伸びていかない。円高ユーロ安の影響により欧州の売上高が減少している。しかし、フランスのホリバABX社に9億円を投じ、中/大型血球計数装置の開発を強化した。また、日本国内においては世界最小・最軽量の血球+CRP同時測定装置の発売に踏み切った。電子カルテ連携による新規顧客の獲得を狙う。
 
 ―― BRICSの成長が止まってきましたが、この影響については。
 堀場 私の考えによれば、大きな経済で左右される経営ではダメなのだ。筋の良いお客様を選び、筋の良い技術を提供するという哲学を貫けば、そうした経済変動の影響をできるだけ受けないで済む。M&Aや積極的な設備投資はこれからも断行していく考えであるが、開発する手間と時間を稼ぐための努力なら、どんなこともする。また、現状で非常に興味を持っているのは日本勢が強いロボット産業であり、堀場もこの分野に向いた製品の開発を進めていく。今後の堀場の企業としての発展と安定性を考えれば、やはり売り上げ3000億円規模の会社にならなければダメだと思っている。そのためには私も含めて、全スタッフがもっともっと汗をかく必要がある。

(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年11月12日号10面 掲載)

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