電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第150回

TSMCジャパン(株) 代表取締役社長 小野寺誠氏


15年は“特殊”な年
国内はベンチャーや大学の支援強化

2015/12/18

TSMCジャパン(株) 代表取締役社長 小野寺誠氏
 ファンドリー最大手、台湾TSMCにとっての2015年は、例年とは異なる「特殊」な一年になったのではないだろうか。通常は第2四半期(4~6月)から第3四半期(7~9月)にかけて売り上げのピークを迎えるが、今年はスマートフォン(スマホ)に代表されるファンドリー市場の需要が調整局面を迎えるなどして、通常とは異なる成長カーブを描くことになった。足元の市況も不安定で、16年年明けの需要動向も依然として不透明な状況だ。現況と今後の見通し、そして日本国内市場の取り組みについて、日本法人代表の小野寺誠氏に話を伺った。

―― まずは足元の業績動向からお聞かせ下さい。
 小野寺 15年第3四半期(7~9月)業績は、売上高が2125億台湾ドル(前四半期比3%増/前年同期比2%増)、営業利益が784億台湾ドル(同2%増/同8%減)となった。第4四半期はまだ終わっていないが、ガイダンスどおりの結果になれば、第1四半期が最も高い売上高となる。通常、我々の業界は第2~第3四半期にピークを迎えるが、今年に限っていえば第2四半期は前四半期比で7.5%減となっており、こうした動きは私のなかでもあまり記憶にない。

―― 背景はスマホ市場の調整ですか。
 小野寺 市場全体の流れとして、第2四半期から顧客側での在庫調整が表面化した。現在はかなりの部分で余剰在庫が消化されており、15年末には調整局面が終息すると見ている。ファンドリーは事業構造上、在庫のインパクトを受けやすく、さらに当社売り上げの半分以上がスマホで構成されていることから、こうした市場の外的要因を強く受ける格好となった。

―― 通年での売り上げ成長は。
 小野寺 第4四半期がガイダンスどおりに進めば、15年は前年比で11%増となる見込みだ。14年は前年比28%増と非常に高い数字を残しているが、2年間トータルで見れば、平均で20%近い成長率となる見通しだ。

―― 先端プロセスの状況を教えて下さい。
 小野寺 FinFETを用いた16nm世代は第3四半期から本格量産を開始しており、売り上げ寄与が始まっている。製造設備的にも20nmとの互換性が高く、約95%で設備の流用・共通化が可能だ。16nmはテープアウト(TP)件数で現状40件前後、16年末には100件以上に達する見込みで、20nmよりもTP件数は多くなる見込みだ。

―― 設備投資の方向性は。
 小野寺 第3四半期のガイダンスで発表したとおり、15年通年の設備投資金額を従来の105億~110億ドルから80億ドルに引き下げた。ただし、年初に掲げた300mmウエハーの生産能力を従来比12%引き上げるという計画に変更はなく、減額幅の多くは投資効率の改善や既存製造設備の有効利用、為替の影響によるものだ。16年計画の詳細は発表していないが、15年比で増加する見通しだ。16nmのほか、10nmの立ち上げ費用が中心となる。10nmは16年中のリスク生産開始を予定している。

―― 国内ビジネスの進捗状況について。
 小野寺 14年は過去最高の売上高を記録し、非常に良い年であった。15年は成長率という観点では14年に劣るが、引き続き過去最高を更新する見込みであり、「それなりに良い年」であったといえるのではないか。すべての分野が右肩上がりで成長したわけではなく、やはり市況低迷の影響を受けて、コンシューマー分野は低調であった一方、車載分野では引き続き安定した需要があった。製造プロセスも16nmから6インチウエハーの案件もあり、非常にバラエティーに富んでいる。

―― 16年に向けた日本での事業プランは。
 小野寺 基本方針として、引き続き会社平均を上回る成長率を達成していきたい。特に、スタートアップベンチャーや大学などのニーズに対してシャトルサービスを通じた支援を強化していきたい。こうした分野は今までも注力していたところだが、業界へのアピールをもっと積極的に行っていきたいと思っている。社内的にも組織変更を行って、サポート体制を拡充した。こうした取り組みもあって、今までお付き合いのなかった企業との取引も始まっており、徐々に成果が出始めている。

(聞き手・本紙編集部)
(本紙2015年12月17日号1面 掲載)

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