電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第153回

太陽誘電(株) 代表取締役社長 登坂正一氏


IoTで事業活動を「見える化」
売上高は3000億円規模に

2016/1/15

太陽誘電(株) 代表取締役社長 登坂正一氏
 太陽誘電(株)は、IoTとビッグデータを活用し、全世界で展開している事業活動の「見える化」を推進する。同社が得意とするハイエンド商品の拡大とともに、車載、産業機器、医療、エネルギー分野での拡販を狙う。そして、ここ数年内に売上高を2500億円規模から3000億円に引き上げる計画だ。今後に向けた事業方針を代表取締役社長の登坂正一氏に伺った。

―― 2015年11月1日付で社長職に就任されました。これまでのご経歴は。
 登坂 コンデンサーやインダクターをはじめとする電子部品の開発や製造、品質保証、生産設備を含む製造ラインの構築など、主に技術畑に携わってきた。

―― モノづくりの第一線を歩んできたエンジニアの視点から、また社長職の立場から、貴社の強みとは。
 登坂 商品化にあたり材料から開発を行っていることだ。生産装置も内製化しており、他社が容易に追随できない高い技術力を培ってきた。

―― 同じ視点と立場から、てこ入れすべき課題とは。
 登坂 ソリューションの提供であろう。電子部品メーカーがディスクリートやモジュールを供給するだけでなく、高い付加価値を持つソリューション提案型ビジネスを展開する時代が到来したと思う。モジュールを例に挙げれば、小型・薄型・低背化を徹底追求した提案や、ソフトウエアを組み込んで機能を提案するアプローチなど、様々なことが求められる。
 ユーザー動向にアンテナを張り、数多くの情報を入手。ビッグデータを分析することで、アプリケーションの進化の方向性が浮上してくる。その方向性を素早く把握し、個々のユーザーに対して提案型ビジネスを展開していく。
 提案型ビジネスと当社の開発・生産技術とが合体した時、当社のビジネスは大きな変化を迎えることができる。

―― 貴社の右肩上がりの業績を牽引するアプリの1つ、スマートフォン(スマホ)市場の今後は。
 登坂 16年1~3月期は季節性で調整局面を迎えるであろうが、4月ごろから再び活性化すると推測する。スマホの台数の伸び率は2桁%から1桁%に鈍化すると見ているが、多機能化、高性能化に伴い、電子部品の使用点数は増加。通信系もバンド数の増加や通信方式の変化などで、FBARおよびSAWフィルターも強い伸びを想定している。16年のスマホ戦略は、員数増加と電子部品のハイエンド化が決め手となる。中国のスマホメーカーに関しては、各社の業績がめまぐるしく変わる。個々のメーカーの動向による影響を抑制するため、幅広いメーカーとビジネスを進める。

―― FBARなどの生産体制は整いましたか。
 登坂 太陽誘電モバイルテクノロジー(株)は、15年度上期に青梅への生産設備移管を完了した。今後は、さらに高い生産効率と歩留まりを実現する生産ラインを構築していく。

―― 今後の事業方針は。
 登坂 スマホを核とするモバイル情報端末分野とともに、車載、産業機器、医療、エネルギーの新規事業に注力する。今後3年以内をめどに、この新規事業分野の売上高比率を全体の30%にまで引き上げる。車載に関しては、ADAS(先進運転支援システム)をはじめとするセーフティー系およびボディ系を深化させ、駆動系、エンジンルーム内を攻略していく方針だ。そして、車載用途の売上高比率をゆくゆくは全体の15%前後にまで拡大していきたい。
 人命に直結する車載用電子部品に取り組むには、ある種の覚悟がいる。高品質・高信頼性部品の提供だ。そのためには生産ラインのレベルアップが不可欠となる。世界中に展開した生産拠点でIoTとビッグデータを活用し、トレーサビリティーを強化する。さらに、高効率でスピーディーな生産ラインの「見える化」を構築する。これらの生産体制は、IoTの普及に伴って、数年後にやってくる電子部品需要の急激な拡大に対応するためのモノづくり力の基礎となるであろう。車載への取り組みは、売上高寄与以上の価値を得ることができる。

―― 今後の展望をお聞かせ下さい。
 登坂 「見える化」ラインを構築しつつ、M&Aなども視野に入れる。産業機器分野に関しては、資本業務提携を締結したエルナー製コンデンサーが市場拡大の活路を開くことを期待している。高い技術力を活かしたスーパーハイエンド戦略と注力すべき新規事業の拡大で、まずは売上高3000億円企業を目指す。製品構成比率は、既存部品が62%、新規事業製品が38%のいわゆる“黄金比”にしたい。

―― 設備投資計画については。
 登坂 15年度の計画は400億円。ハイエンド商品の需要増に対応するため、新潟太陽誘電第2号棟の新築、和歌山太陽誘電の第1/第2期増設工事、マレーシア工場強化などに投資した。16年度、17年度はそれぞれ300億円規模で、15年度からの3年間で計1000億円を投資する予定だ。コンデンサー、インダクター、通信デバイス、それぞれのハイエンド商品を中心に強化していく方針だ。


(聞き手・本紙編集部)


(本紙2016年1月14日号1面 掲載)

サイト内検索