電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第170回

(株)アミューズワンセルフ 代表取締役社長 佐野一栄氏


安全性に優れた業務用ドローン
法規制や資格整備にも取り組み

2016/5/13

(株)アミューズワンセルフ 代表取締役社長 佐野一栄氏
 (株)アミューズワンセルフ(大阪市中央区北浜1-1-14、Tel.06-6210-3345)は、2011年に設立されたベンチャー企業。業務用のドローンを製品化しており、安全面を重視したハード設計や運用時の事故防止を目指した取り組みを積極的に行っている。代表取締役社長の佐野一栄氏に話を聞いた。

―― 設立の経緯と事業概要から。
 佐野 技術担当の冨井隆春が2000年代前半から携わっていたトンネルなどのインフラ、地形向け3次元計測技術の事業化を目的に設立した。業務用市場で実績を持つ技術をベースにしており、高精度な計測、解析が可能である。12年からドローンの受注販売を開始し、14年に量産モデルを発売した。これまでに累計100台の販売実績を持つ。官公庁や民間企業で、インフラの点検、災害現場の調査、観光用映像の撮影などに用いられている。新規導入だけでなく、他社製ドローンからの買い替え需要もある。

―― 性能だけでなく、安全性を追求している。
量産ドローンの現行モデル
量産ドローンの現行モデル
 佐野 市販されているドローンは、低価格を重視するあまり安全性をおろそかにしている製品が少なくない。当社は人の頭上を飛行するドローンには最大限の安全性が必要との考えのもとで、ハードの設計のみならず材料から自社開発している。部品加工は高い技術を持つ大阪の中小企業に委託している。機体の軽量化と強度を両立させ、墜落や部品の脱落を防ぐ構造、遠隔監視機能を備えている。また、販売後も顧客が安全に運用できるように操作方法のレクチャーやトラブル対応などのサポートを行っている。量産モデルの価格は800万円~と、一般的なドローンより高価だが、業務用に用いられている無人ヘリコプターと比べると低コストを実現している。

―― ドローンの新モデルを投入した。
 佐野 4月末に5機種を発売した。全天候タイプ、多機能折り畳みタイプ、汎用タイプ、長時間飛行タイプと、長時間飛行タイプに3Dレーザースキャナーを搭載したタイプとなる。いずれも現行モデルと比べ安全性、使い勝手を向上させており、さらなる軽量化を図った。3Dレーザースキャナー搭載モデルは従来の写真計測では行えなかった地表面の計測を実現でき、数千万円の無人機の代替が可能になる。価格は現行モデルと同等で、従来は自社で行っていた組立と販売を外部委託して供給体制を拡大する。すでに注文が入っており、発売後半年で30~40台の販売を目指す。

―― 法整備、倫理向上に受けた取り組みも積極的ですね。
 佐野 ドローンは近年一気に発展・普及が進んでいるため、技術の向上に法規制の整備やメーカー、ユーザーの倫理面の向上が追いついていない。このため、安全性に問題のある製品や使い方が横行してしまっているのが実情である。ドローンは今後、荷物の輸送や農林業などにより幅広く用いられることが予想され、安全性を確保するための法規制の整備が必要だ。
 そこで当社は業界団体に参画して、国の安全規制の整備や民間ドローン運用資格の立ち上げを働きかけるとともに、スキルアップ講習の体制を支援している。運用スキルを高める体制が整えば、ドローンのレンタルビジネスも可能になる。

―― 今後の事業の方針は。
 佐野 現在はドローン事業に注力しているが、もともと当社は「面白い」「すごい」「役に立つ」と思ったものを試作して顧客のアイデアと組み合わせて製品化することをコンセプトとしている。ハード、ソフトを問わず、新しいものの開発に取り組むのが好きなメンバーが揃っており、その強みを生かして様々な仕事に取り組んでいきたい。

(聞き手・中村剛記者)
(本紙2016年5月12日号9面 掲載)

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