電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第167回

注目集まる家畜糞尿バイオマス発電


高いFIT調達価格を背景にガス化方式の導入進む

2016/10/7

 カーボンニュートラルのエネルギーとして世界的に注目されるバイオマス。その用途は発電、燃料、熱利用、素材など様々だ。このうち発電用途ではガス化や直接燃焼による木質バイオマス発電への投資が目立つ。一方で、昨今導入が進んでいるのが豚、牛、鶏などの家畜糞尿を燃料とする家畜糞尿バイオマス発電だ。本稿では家畜糞尿バイオマス発電についてレポートする。

 2012年に開始した再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)におけるバイオマス発電の調達価格はメタン発酵ガスが39円/kWh、間伐材等由来木質バイオマス(2000kW未満)が40円/kWh、同(2000kW以上)が32円/kWh、一般木質バイオマス・農作物の収穫に伴って生じるバイオマスが24円/kWh、建築資材廃棄物が13円/kWh、一般廃棄物・その他のバイオマスが17円/kWh。調達期間はいずれも20年間となっている。

 家畜糞尿バイオマス発電では木質バイオマス発電と同様にガス化と直接燃焼の方式がある。調達価格は前者が39円/kWh、後者は17円/kWhがそれぞれ適用される。調達価格が高いことから、近年の設備投資はガス化が中心となっている。なお、経済産業省 資源エネルギー庁によると、16年3月時点におけるバイオマス発電の認定設備容量は370万kW、稼働件数は234件。

ガス化の導入が加速

 ガス化は豚・牛・鶏および生ごみからメタンガスを抽出し、バイオマス発電機を稼働させることで発電する。一般的なプロセスフローは、発酵乾燥→ハウス乾燥→粉砕・異物除去→成型処理→熱分解ガス化→発電→廃熱乾燥となっている。また、熱分解ガス化で生じた焼却灰は肥料として使うことができるほか、廃熱乾燥機により廃熱を利用できる。

 家畜糞尿バイオマス発電プラントが特に集中しているのが北海道だ。道内においてバイオガス発電プラント(木質含む)は6市町村(帯広市、鹿追町、士幌町、足寄町、中札内村、大樹町)で18基程度が稼動しているが、このうち鹿追町と大樹町が国内最大級の設備を保有している。

 鹿追町のバイオガスプラントは「鹿追町環境保全センター」(中鹿追町)および「瓜幕バイオガスプラント」の2基。鹿追町環境保全センターは、鹿追、中鹿追地区の酪農家11戸が利用する集中型のバイオガスプラント。家畜排泄処理量94.8t/日(成牛換算約1300頭)、最大発電量300kWhに対応する。また、年間では一般家庭460戸分の使用量に相当する180万kWhに対応する。このうち約5割を施設内利用、残りを売電している。売電収入は施設の管理費などに充てている。さらに、消化液は高品質の有機肥料として年間3万tが酪農家、耕農家に供給されている。
 一方、瓜幕バイオガスプラントは環境保全センター内に設置された新たなバイオガスプラント。設計・施工一括の性能発注により大成建設JVが整備を進めてきたが、15年度に完成し、16年4月から稼働を開始した。総事業費は28億5800万円。家畜排泄処理量は210t/日(成牛換算約3000頭)で、環境保全センターの2倍以上の規模となる。最大発電量700kWhに対応する。

 一方、直接燃焼は燃料を直接的に燃焼するもの。ペレット状の燃料にして燃焼するケースが多い。燃料化のプロセスフローは1次・2次発酵→ハウス乾燥→粉砕→成分調整混合→成型→仕上げ乾燥となっている。発電機の廃熱はハウス用暖房や温水製造などに利用できるほか、焼却灰は肥料として活用することが可能。

 大型の投資案件としては宮崎県の「みやざきバイオマスリサイクル発電所」が代表的だ。同発電所は同年に着工し、同年から稼働を開始した。経済産業省によりRPS法設備として認定されている。主な燃料はブロイラーの糞。規模は鶏糞焼却量13万2000t/年(440t/日)、焼却灰量1万3000t/年。発電出力は11.4MWで、ほぼ全量を電力会社に売電している。

 宮崎県は鹿児島県に次いで国内2位のブロイラー出荷羽数を誇る。糞は肥料として活用しているものの、それ以上に量が発生するため処理しきれなかったことから事業計画が浮上した。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 東哲也

サイト内検索