電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第297回

(株)ジャパンディスプレイ 代表取締役社長兼COO 月崎義幸氏


製品価値を発信、黒字継続が使命
印刷式有機ELは車載用にも提案

2018/11/2

(株)ジャパンディスプレイ 代表取締役社長兼COO 月崎義幸氏
 2017年に構造改革を断行し、18年度は黒字化達成を目指す(株)ジャパンディスプレイ(JDI)。7月に代表取締役兼COOに就任した月崎義幸氏に製品、事業戦略などを伺った。

―― スマートフォン(スマホ)依存の収益体質からの脱却を進めています。
 月崎 スマホ、車載、新規事業の3事業で展開を進めていく。「脱スマホ」という考えは全くない。分野としては、スマホに代表される「モバイル」と「ノンモバイル」の両輪で事業展開を図る。実際のところ、17~18年度のモバイルとノンモバイルの売上比率は8対2ほどだ。これを徐々に7対3、6対4へ持っていくが、ノンモバイルは安定分野であり、飛躍的に拡張する事業ではない。工場の稼働率を確保していくためにも、モバイルにも注力していく。18年度に黒字化達成を見込んでおり、これを継続させていく。

―― 新しいビジネスモデルも構築中です。
 月崎 8月に発表した鏡に変化するディスプレー「遅れ鏡」も、新しいJDIの見せ方の1つ。継続的にお客様に新しい価値を提案していくことが重要だ。市場ニーズに先行して提案すべく、マーケティングに注力し、技術力のアピールだけでなく、使い方やコンテンツの提案をして、ソリューションビジネスで収益を確保するビジネスモデルを確立していく。
 また、新しい商材としては、市場シェアトップのウエアラブル向け反射型ディスプレーや、VR向けの約1100ppiのパネルなどにも期待しており、ブレークスルーとなる商材を次々提案していきたい。

―― 医療向けも手がけていますね。
 月崎 医療用モニターのなかでも特殊で、21.3型500万画素のマンモグラフィー向けモニター用LCDを手がけ、市場シェアもトップクラスだ。専門の読影医が診るもので、医療用のなかでも特に高精細であることが要求される。2枚の画面を並べて診断するが、当社のLTPS技術でパネルの間の額縁を削減することに成功している。
 また、同パネルは超高輝度が要求され、バックライトの輝度を上げるため、発熱対応としてモニターにファンを搭載するのが一般的だった。当社の医療向けパネルは「IPS-NEO」により黒色を際立たせるだけでなく、LTPS搭載でパネル透過率も高いことからモニターにファンが不要になり、静かに読影に集中できることが高評価を得ている。これらは日立時代から高性能医療モニターに携わってきた知見によるところが大きい。

―― 18年3月までにグローバルパートナーを確保する計画を延期した有機ELディスプレーについて。
 月崎 市況の風向きが変わり、有機ELが液晶を駆逐し、何が何でも有機ELディスプレーでないとならないという市況ではなくなった。当社の有機EL技術をきちんと評価してくれる企業をパートナーに選びたい。安売りするつもりはなく、焦ってもいない。進捗としては、茂原工場J1ラインに蒸着の量産試作ラインを整備し、量産化の検証フェーズに入った。
 また、印刷式有機ELディスプレーを手がけるJOLEDとの協業関係はより強固になっている。同社は当社の旧能美工場に量産拠点を立ち上げ中だが、現在はバックプレーンを当社の石川工場から提供している。生産や設計の協業だけでなく、販売についても当社のルートで行っている。

―― 印刷式有機ELの役割について。
 月崎 JOLEDの印刷式有機ELディスプレーは新規分野の1つと位置づけている。現状、お客様には印刷式有機ELディスプレーをラインアップの1つとして提案しており、車載用にも開発を進めている。
 車載用途で印刷式有機ELがマッチするのは、CID(Center information Display)や電子ミラーだとみている。CIDでは曲面でシームレスなデザインが好まれるが、デザイン性や曲げやすさなどで印刷式は勝っている。また、有機ELの応答速度の速さから電子ミラーにも向いているとみている。車載向けで展開できる選択肢の幅が広がってきている。

―― 19年度の事業見通しについて。
 月崎 まだ公表できる段階ではない。18年度の黒字化がまずは第一歩。当社の技術を認めてもらえる製品を出し続け、黒字化を継続しなければならない。

(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2018年11月1日号1面 掲載)

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