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第303回

TSMCジャパン(株) 代表取締役社長 小野寺誠氏


18年業績は6.5%成長見通し
「7nmのモメンタム強い」

2018/12/14

TSMCジャパン(株) 代表取締役社長 小野寺誠氏
 ファンドリー世界最大手TSMCにとっての2018年は、複数回にわたって下方修正を余儀なくされるなど、決して順風満帆といえる状況ではなかった。ただ、様々なマイナス材料が出てくるなかでも18年もプラス成長を確保、年間の売り上げ規模は今や米ドルベースで300億ドルを優に超えるものとなってきた。ファンドリー市場では引き続き圧倒的なシェアを有しており、世界の半導体産業にとっての「重要インフラ」として存在感を高めている。日本法人代表の小野寺誠氏に18年の振り返りを中心に話を伺った。

―― 18年の業績見通しから教えて下さい。
 小野寺 18年は年初段階では前年比10~15%増を見込んでいたが、その後四半期決算のたびに見通しを下方修正する事態となった。直近の第3四半期決算では前年比6.5%増(米ドルベース)と設定しているが、もともと当社は中長期の成長ターゲットとしてCAGR(年平均成長率)5~10%増を想定しており、その範囲内に収まっていることを考えれば、それほど悲観視する状況ではない。

―― 業績下ぶれの背景は。
 小野寺 一番大きかったのが仮想通貨向けの需要減だ。17年後半ごろからマイニング用途の半導体需要が急速に立ち上がってきて、18年初頭の時点でも旺盛な需要が続いていた。当社としては、18年下期はもともと保守的に仮想通貨向け需要を見ていたが、結果的にはそれを大きく下回るかたちとなった。
 ただ、仮想通貨向けを含むAIやディープラーニングなどのHPC(High Performance Computing)分野の成長性に対する見方は変わっておらず、仮想通貨向けが低迷しても他のアプリケーションが牽引してくれると見ている。

―― スマートフォン(スマホ)向けは。
 小野寺 17年後半にスマホ向け半導体需要の取り込みに過熱感が出て、18年上期は在庫調整の色合いが強くなり、力強さに欠ける状況であった。しかし、下期以降はハイエンドスマホ向けの7nm(N7)対応のチップ需要が増加傾向にあり、下期は比較的高めの成長率を見込んでいる。

―― N7の進捗状況は。
 小野寺 今年一番の成果といえるのが7nmの立ち上げだ。4~6月期から量産を開始しており、7~9月期での7nmの売り上げ構成比は11%を記録、10~12月期ではこれが20%以上に上昇する見通しだ。足元でも非常にモメンタムが強く、分野別ではスマホ、HPC分野が牽引している。テープアウト(TP)件数でいえば、次世代の7nm+(N7+)を含めて、19年末までに100件以上を予定している。

―― 従来に比べて顧客数が増えている印象です。
 小野寺 HPC分野を中心に顧客数が増加している。これにより、当社のフォトマスクの内製キャパシティーも逼迫しており、異例ではあるのだが、1~3月期決算発表時点でマスクのキャパシティーの増強のため追加投資を決めた。

―― N7とN7+のすみ分けは。
 小野寺 基本的にはN7が主力のプラットフォームとしてまず立ち上がり、時間とともにN7+に徐々に移行していく見通しだ。ただ、一部大手の顧客は毎年最新プロセスを採用するケースもあり、そういった顧客を中心にN7+の採用が進んでいる。N7については現在の採用顧客に加えて、現状で16/12nmを採用している顧客が今後第2、第3の波として加わってくるため、ロングライフノードとして活躍してくれると見ている。

―― 業界全体で28nm世代のオーバーキャパシティーが問題となっています。
 小野寺 いろんなファクトが重なって発生している問題と考えている。まず、先端ロジック分野では28nmの次の世代にあたる16/14/12nmの技術的難易度が高まっており、先端ではより28nmに注力する状況となり、需給がアンバランスになっているもようだ。今後、40nmのように様々な派生プロセス(混載メモリーや高耐圧など)が普及していけば、こうした問題を解消していけると思うが、しばらく時間がかかりそうだ。

―― 設備投資については。
 小野寺 18年は100億~105億ドルを計画しており、引き続き100億ドルを超える高水準の投資を実施している。台南で建設を進めている最新鋭の「Fab18」は5/3nm世代の主力工場として位置づけられており、フェーズ1の立ち上げに尽力している。今後数年間にわたり年間100億~120億ドル程度の高水準投資が続くと思われる。

―― 最後に日本法人としての成果と抱負を。
 小野寺 昨年17年は様々な大型案件を獲得したこともあり、前年比で約40%増と地域別でもトップの成長率を記録できた。一方で、18年に関しては一部在庫調整の影響も受けており、17年並みの事業規模となりそうだ。ただ、エマージングマーケットを中心とする新規顧客の開拓は順調に進んでおり、TP件数でいえば17年よりも18年の方が多い状況で、来年以降の成長に向けた下地はできている。

(聞き手・副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2018年12月13日号4面 掲載)

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