電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第336回

日本サイプレス合同会社 社長 長谷川夕也氏


18年度売上高は創業来最高
日本市場も2年連続2桁成長

2019/8/16

日本サイプレス合同会社 社長 長谷川夕也氏
 サイプレス セミコンダクタは、SRAMメモリーから事業をスタートさせ、その後低電力マイコンのPSoCシリーズを展開し、タッチセンサー、USB-C、Wi-FiやBLE(Blutooth Low Energy)向けコントローラーなど多岐にわたる製品を提供してきた。近年は車載用マイコンの拡販に注力し、トップベンダーの地位を獲得している。日本サイプレス合同会社 社長の長谷川夕也氏に事業状況や製品戦略などについて伺った。

―― 2018年度の総括からお願いします。
 長谷川 18年度の売上高は前年度比6.7%増の24億8000万ドルとなり、過去最高額となった。17年度と16年度も創業来最高額を達成しており、好調な業績が継続している。
 日本の売上高は例年、全体の30~35%を占め、2年連続で2桁成長を遂げている。特に車載向けが牽引し、産業用途も堅調に推移した。これらに加え、日本はゲーム機向けの伸びが大きい。また、15年に私が現職に就任後手がけてきたモジュールメーカーとの協業事業が年々拡大しており、すでに3桁億円規模の事業に成長していることも奏功している。

―― 19年度の計画と見通しについて。
 長谷川 18年度は、17年に量産開始した車載マイコンのTraveo(トラベオ)のフル生産が継続した。この状況は19年度も同様で、引き続き好調な受注を得ている。後継品となる40nmプロセスで設計したトラベオ2は、18年にサンプル出荷を開始し、19年末に量産を開始する計画だ。
 日本も同様で、現状かなりの受注を確保している。日本のお客様の生産は第3四半期がピークになる場合が多く、今期(7~9月期)の状況から、19年度は前年度比微増となる見通しだ。全社に占める日本の比率も拡大する見込みだ。

―― 日本市場が引き続き堅調な理由は。
 長谷川 トラベオのような高付加価値品の採用が拡大しているだけでなく、USB-CやWi-Fi、BLEなども搭載製品が拡大しているためだ。また、Wi-Fi/BLEコンボチップの出荷が好調で、車載向けにも受注を得ている。インフォテインメント系からの注目度が高く、当社のモジュールパートナーが精力的に導入を進めている。

―― 全社における日本市場の強みは何ですか。
 長谷川 日本市場は少し特殊だ。例えば、プリンターは日本のお客様が世界市場の7割を押さえており、ゲームもトップメーカーが存在する。新しく着手した電子楽器分野も含め、これらは景気の良し悪しに左右されない強みを持ち、当社の安定した収益の礎となっている。また、自動車関連メーカーが強いことも特徴で、重要な事業基盤となっている。全社売上高に占める車載の比率は35%程度であるのに対し、日本では6割強を占める。
 当社はメモリー、マイコン、USB、Wi-Fi、BLEなど、手がける製品が豊富なことが特徴で、お客様とは「点」ではなく「面」でお付き合いできることが強みだ。メモリーを採用されているお客様が、Wi-FiやBLEチップなども当社製品を採用するといったことが多々ある。日本ではすでに1000社を超えるお客様を獲得しており、次のビジネスにつなげるためにもきめ細かなアフターサービスが大変重要であり、充実を図っている。

―― 独インフィニオンによる買収が発表されていますね。
 長谷川 まだ当局の許可が下りている段階ではなく決定事項ではないため、19年中はR&D含め、当初の計画どおりすべて実施していく。また、日本においては特に車載分野で製品を相互補完できる立場にあるため、ネガティブな要素は少しもなく、Win-Winな状況になるとみている。

―― 現職に就いて3年経ちました。今後の抱負は。
 長谷川 サイプレスは従業員の若年層と年配層のバランスが絶妙で、若年層で事業をドライブし、年配層が培った経験で支えていくという社風ができている。私は40歳になったところだが、10年、15年後のビジネスが語れるのは当たり前で、20年後も見据えていけるようにならなければならないと感じている。マネジメントとしては、中長期にコミットできるようなお付き合いをお客様としていきたいと考えている。

(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2019年8月15日号1面 掲載)

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