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第376回

アルプスアルパイン(株) 取締役常務執行役員CTO 笹尾泰夫氏


車載向けセンシング強化
24年までに1500億円標榜

2020/5/29

アルプスアルパイン(株) 取締役常務執行役員CTO 笹尾泰夫氏
 アルプスアルパイン(株)(東京都大田区雪谷大塚町1-7、Tel.03-3726-1211)は今、新たな価値創造に向け、車載ではCASE領域+MaaSへ向けて、IoTではIoT社会実装に向け、多角的に様々な取り組みを展開している。なかでも電子部品事業ではHMI(Human Machine Interface)、センサリング、コネクティビティーの3つのコア技術の融合と、ソフトウエアを内包させた機能デバイスへの進化へ邁進中だ。
 4月にはスウェーデンのAcconeer(アコーニア)社と車載向け次世代センシング技術の共同開発でMOU(基本合意書)を締結するなど積極姿勢が光る。取締役常務執行役員CTOの任にある笹尾泰夫氏に、車載向け次世代センシング技術への取り組みなど幅広く話を聞いた。

―― 車載向けセンシング技術を強化していますね。
 笹尾 当社は1990年代から車載センシング技術に取り組んでおり、2007年からSENSORINGという商標を掲げ強化してきた。全社売上高の7割強は車載関連であり、CASEへの流れのなかで必然的にセンシング技術の重要性が高まっている。当社はもともとHMI関連ビジネスが多く、そのため、たとえば人が入力する物理的なスイッチからディスプレーへのタッチ式にシフトするなか、当社も静電入力センサーにASICや独自アルゴリズムを内蔵し、ジェスチャー操作などを含む高感度センサーを提供するなど技術進化を進めてきた。
 CASEの「A(自動運転)」に向けては、ステアリングに静電容量センサーを搭載したハンズオンディテクションや、シート座席に静電容量を埋め込んだ心拍検知、AIとカメラによる姿勢、集中度認識、磁気容量検出によるタイヤの摩耗検出など、様々なセンシング技術を同時進行で展開している。

―― アコーニア社とのMOU締結で見据えるのは。
 笹尾 アコーニア社の60GHz帯ミリ波センサーに当社のアンテナやアルゴリズムを組み込んでモジュール化することで、車室内外へビジネス展開が広がる。たとえば、車室内では22年にEuroNCAPで乗員検知が規制化される予定であり、有力な選択肢になる。設置個所は天井部分のランプなのか、フロントガラス部分のカメラ組み込みなのか、eミラー組み込みなのか、など具体的検証もスタートしている。
 車室外では360度センシングに向け2~3mの近距離検知用搭載の話も動いている。既存の超音波センサーシステムもあるが、より解像度を求めるべくミリ波レーダーを四隅~10個程度搭載する検討が進められている。ただし、最終的には10ドル前後まで低価格化が求められるだろう。
 また、両手が荷物などでふさがった際に車の下に足を入れてドアやテールゲートを開閉するキックセンサーでも、既存の超音波センサーや静電容量センサーからの置き換え需要があり、22年から本格量産が見込まれる。

―― 注目しているセンサー技術は。
 笹尾 人間の五感という観点でにおいセンサーも注目だ。CO2の量から眠気度合いを検知、ドライバーのアルコール量検知、国によってはマリファナ検知からエンジン制御につなげるなど、新たな用途が期待できる。ただ、既存の有機化合物を利用した抵抗値変化検出によるにおいセンサーはシステムサイズ、コスト、速度など、まだ課題が多いと見ている。

―― 貴社の強みについて。
 笹尾 適切な複数のセンサーを使い、取得したデータから目的に応じた判断ができるようデータマイニングするアルゴリズムを含むソフトウエアの経験値が最大の強みになっている。モビリティーサービスを志向するOEMの中には、車室内外で乗員の健康管理サービスを望む事例もある。当社にはクラウドも含めたソリューション展開力があるほか、冗長性に対応したデータのエッジ処理力、入口から一気通貫のデジタルツインを含むモデルベースデザインに対応したソフトウエア力がある。ソフトウエアエンジニア1000人以上を擁し、外部と連携する柔軟性も兼ね備えている。

―― 研究開発拠点は。
 笹尾 既存の福島県いわき市に1000人以上、宮城県大崎市に1000人以上の技術集団を擁している。このうち、古川工場内の工場棟跡地を技術開発センターとして再整備し、開発強化を図ることも検討している。

―― 中長期の展望をお聞かせ下さい。
 笹尾 24年までにCASEなどの新規事業で売上高1500億円創出を標榜しており、このうちカメラとミリ波センサーを複合したセンサーフュージョン領域では500億円規模の事業化を実現したい。もともとは航空機や軍需用だったレーダーなどが車への搭載に向けて小型化・低価格化が進行することで、この先にはロボット、ドローン、小型モビリティーなどへ活用の用途が広がり、そこでまた進化していくと考えている。センサーおよびその組み合わせが無限に存在するなか、ソフトウエア、アルゴリズムの重要性はさらに高まるだろう。当社の経験値を発揮するフィールドは広がり続ける。



(聞き手・高澤里美記者)
(本紙2020年5月28日号2面 掲載)

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