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第378回

(株)SCREENホールディングス 代表取締役 取締役社長 CEO 廣江敏朗氏


半導体中心に根強い装置需要
投資先送りに警戒感

2020/6/12

(株)SCREENホールディングス 代表取締役 取締役社長 CEO 廣江敏朗氏
 (株)SCREENホールディングス(京都市上京区堀川通寺之内上ル4天神北町1-1、Tel.075-414-7111)では、新型コロナウイルスの影響による不透明な市況でも、半導体など装置需要は根強いとみている。投資先送りに警戒は必要だが、中長期的な成長期待は変わらず技術開発や収益改善に向けた取り組みに注力していく。代表取締役 取締役社長CEOの廣江敏朗氏に話を聞いた。

―― 2019年度の業績から。
 廣江 19年度は売上高が前年度比11.3%減の3232億円、営業利益が同57.6%減の125億円だった。半導体製造装置事業(SPE)は、メモリー投資が停滞したことで減収減益となった。ディスプレー製造装置および成膜装置事業(FT)は、高採算の有機EL向け中小型装置の納期がずれ込んだ影響で変動費率が上昇し、減収減益だった。プリント基板関連機器事業(PE)はスマホ関連投資が停滞したため、直接描画装置が伸びなかった。営業利益のマイナスのうち、売上減や操業度に起因するものは165億円で、うち半分程度がSPEだった。

―― SPE、FTは第4四半期の受注が想定より上ぶれた。
 廣江 第4四半期の受注額はSPEが624億円で想定比100億円程度上ぶれ、FTは69億円で想定比20億円近くのプラスだった。SPEは、台湾と中国のファンドリー需要が想定より強かった。中国は国内メーカーによる内製需要の高まりが背景にあると考えられるが、20年度も継続する動きかどうかは不透明感がある。台湾はサーバー投資向けの需要が下支えしており、19年度程度の受注は20年度も続くと考えている。
 FTは有機EL向け装置の納期ずれがあったものの、スペアパーツの駆け込み需要などがあり受注額が増加した。20年度は投資需要が回復に向かうと想定しているが、新型コロナの影響で顧客のプロジェクトに遅れが生じ、据付が後ろ倒しになる懸念がある。中国拠点の人員で対応可能な体制を構築するなど、当社として打てる手を講じている。

―― 20年度に入ってからの市況について。
 廣江 半導体、ディスプレー市場ともに顧客からの装置立ち上げニーズは強い。プリント基板製造装置も5Gの基地局用基板の活況を背景に、根強い需要がある。海外向けでは日本のエンジニアが現地入りできないことがボトルネックとなっているが、新型コロナの検査体制の整備により越境も可能になっていくと期待している。
 ただ、5月下旬に入って顧客に様子見の機運が出てきた。米中貿易摩擦が再び激化の気配を見せているため、投資時期を再検討していると考えられる。中長期的な市場成長への期待に変わりはないが、投資回復がさらに伸びてしまう可能性は懸念している。

―― 事業ごとの戦略を。まずSPEから。
 廣江 主力の洗浄装置をさらに強くしたい。微細化の進展で技術的難易度はさらに上がっており、リソースを集中投下して差別化にこだわる。洗浄装置以外では、パッケージなど技術的な変化が起きる分野に投資する方針だ。

―― SPEの収益改善に向けた取り組みは。
 廣江 収益悪化を招いたサプライチェーンの混乱には手当てをした。また、評価機が期待した価格で売れないという問題も見直しを行った。彦根事業所(滋賀県彦根市)の新棟「S3-3(エス・キューブ スリー)」は現在、新規受注が好調に推移し、直近の稼働率は80%まで高まっている。現在の能力はフル想定の3分の2であり、追加投資でさらに効率化が可能だ。SPEの利益率は四半期ごとに改善しており、新中期経営計画では数値目標を示したい。


(聞き手・本紙編集部)
(本紙2020年6月11日号1面 掲載)

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