電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第388回

リコー電子デバイス(株) 代表取締役社長 田路悟氏


ADAS関連など注力
低消費・低ノイズの強み活かす

2020/8/21

リコー電子デバイス(株) 代表取締役社長 田路悟氏
 リコー電子デバイス(株)(大阪府池田市姫室町13-1、Tel.072-748-6266)は、電源ICを主力とするCMOSアナログに特化した半導体メーカーである。2018年に傘下に入った日清紡ホールディングス(株)とのグループシナジー創出を進めるとともに、得意とする低消費、低ノイズな電源ICの展開を強化している。代表取締役社長の田路悟氏に話を聞いた。

―― 足元の業績から。
 田路 19年12月期は車載用のバッテリーマネジメントIC(BMIC)などが伸長したものの、米中貿易摩擦によりスマートフォン(スマホ)や産業機器向けが減少し、トータルでは減収減益だった。
 年末ごろから回復に向かったため20年は期待していたのだが、年明けから新型コロナウイルスの問題が発生してしまった。20年1~3月には中国市場が落ち込み、4~6月には中国市場は回復してきているもののワールドワイドでの市況低迷の影響を受けた。下期の回復を期待しているが、車載は全体的に落ち込みが大きい。そんななかでADAS関連は引き合いが強い状態が続いている。また、スマホの秋モデル向けも立ち上がってきている。ほかにもPCなどが堅調で、これらで底上げを図って、通期では前年度並みの売り上げを確保したい。

―― 製品用途別の状況を。まず民生から。
 田路 ゲーム機やPC向けは、巣ごもり需要の増加でプラスに転じている。日曜大工用のパワーツール向けも好調だ。ワイヤレスイヤホンやウエアラブル向け、ワイヤレスクリーナー向けなども伸びている。

―― 産業機器向けは。
 田路 急速には回復しないが、中長期的な成長に期待している。5Gインフラ関連やロボット、ドローンなどが挙げられる。長期稼働する機器の安定動作を支援するシステム電源ICにも注力している。

―― IoT関連の成長に期待している。
 田路 産業用エッジデバイスをターゲットとしているが、リモートニーズの増大に伴って今後の普及拡大が期待できる分野になっている。当社ICの超低消費電力性、低ノイズ性を活かせる用途として開発を強化している。例えば、環境センサーと小型リチウムイオン電池、無線通信機能および電源ICを搭載したIoTエッジ端末用ボードを20年1月に発売したほか、TDK(株)の全固体電池を用いたIoT用電源モジュールも開発し、展示会で紹介している。

―― 車載関連の取り組みは。
 田路 車載カメラやLiDAR向けなどのADAS関連の電源ICは、機器の多機能化に伴って高精度化が進み、ノイズ対策ニーズが強まっている。低ノイズ性、耐ノイズ性にフォーカスした開発を推進している。また、安全性ニーズの高まりにより、入出力電源監視ICなどの需要も増加しており、対応していく。

―― 車載ヘッドアップディスプレー(HUD)用半導体レーザー(LD)ドライバーを製品化した。
 田路 複合機向けで培った技術を応用して開発し、19年11月に発売した。同時に、ピコプロジェクター向けLDドライバーも製品化した。LDドライバーはLiDARや車載ヘッドライトなど、LDを用いた高度なアプリケーションで今後も需要拡大が期待できる。

―― 医療向けの開発も行っている。
 田路 モバイル機器で培った技術を活かし、補聴器向けなど小型医療機器向けの電源ICを開発している。遠隔医療の実用化により、今後は在宅で設置される小型医療機器の安定稼働に貢献する電源ICのニーズが出てくると見込んでいる。

―― 日清紡グループにおけるシナジー創出の取り組みは。
 田路 同じアナログ半導体メーカーである新日本無線(株)の製品を当社で委託生産するとともに、新日本無線の後工程拠点の活用を開始している。また、19年9月に開催された日清紡グループのプライベートショーに出展した。無線関係や材料部門など、想定していた以上にグループ内でシナジーが見込めると手応えを感じており、他部門とのコラボを推進したい。

―― やしろ工場(兵庫県加東市)で微細化投資を進めている。
 田路 やしろ工場は6インチが月1万2000枚、8インチが月6500枚の能力を持つ。18年度から8インチラインで0.18μmへの微細化投資を進め、21年に0.18μm製品の量産開始を予定している。微細化に伴って能力も拡充しており、21年から寄与してくる見込みだ。今後、継続的に8インチの生産能力を引き上げ、25年度までに月1万枚規模とする。

―― 新型コロナに対する考えや取り組みは。
 田路 「ウィズコロナ」は長期化するとみており、自動化や非接触、医療が今後の市場のキーワードになる。そのなかで当社の強みをどう訴求できるかを考えていく。オンライン展示会やウェブセミナーにも注力したい。生産ではこれまでにも進めていた自動化やIoT化をさらに推進し、競争力向上につなげていく。

(聞き手・中村剛記者)
(本紙2020年8月20日号1面 掲載)

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