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第511回

東京エレクトロン(株) 代表取締役社長CEO 河合利樹氏


次の成長サイクルに備え体質強化
売上3兆円目標も「あくまで通過点」

2023/2/3

東京エレクトロン(株) 代表取締役社長CEO 河合利樹氏
 半導体市況が調整局面となるなか、半導体製造装置(SPE)メーカー各社も受注減に加え、一部業績の下方修正を行う企業も出てきている。国内トップの東京エレクトロン(株)(東京都港区)も2022年度上期決算発表にあわせて通期予想の見直しを行ったが、代表取締役社長CEOの河合利樹氏は、次の成長サイクルに向けた絶好の準備期間と捉えている。中計目標の売上高3兆円以上を「あくまでも通過点」と語る同氏にこれまでの振り返り、そして足元の状況、さらには中長期のビジョンを語ってもらった。

―― 16年の社長就任からこれまでを振り返って。
 河合 短中長期の利益を同時に志向して拡大させる、そして企業価値を向上させることをCEOのミッションとして捉え、これまで取り組んできた。この間、半導体前工程装置(WFE=Wafer Fab Equipment)市場は14年から21年で2.7倍に拡大したが、同期間にあたる当社の売上高は14年度(15年3月期)の6131億円から21年度には2兆38億円となり、3.3倍に拡大した。営業利益率はほぼ30%に達したことで、営業利益は6.8倍に拡大するなど、すべての重要指標で市場成長をアウトパフォームすることができた。もともと、23年度を最終年度としていた財務モデルも2年前倒しで達成でき、時価総額も約5倍となった。

―― 従業員に向けてはどんなメッセージを送ってきましたか。
 河合 当社の原動力はSPE業界のリーディングカンパニーとしての技術力と顧客からの絶対的な信頼だ。これを維持・強化していくためにやる気重視の経営を大事にしてきた。従業員に対しては、失敗を恐れずに積極的なチャレンジを促し、成果として出てくれば、世界水準に見合うような報酬・給与体系も構築してきた。私自身も従業員とのコミュニケーションを持つ場として座談会を定期に行っており、特に就任当時は各拠点でかなりの数をこなした。重要なことは自分の能力の限界が会社の成長の限界になってはいけないことで、従業員との会話を通じて自分自身も成長させてもらうことができたし、実際にそれを経営に生かすこともあった。

―― WFE市場でのシェアも上昇しました。
 河合 好不況にかかわらず、付加価値の高い次世代製品を創出していくために、研究開発投資は惜しまずに続けてきている。17年度から21年度における5カ年累計の研究開発投資は約6000億円であったのに対し、22年度から26年度までの5カ年では1兆円以上を計画している。もちろん、顧客との強固なパートナーシップも重要で、製造プロセスにおける4世代同時評価など顧客とのロードマップアライメントなどを重視してきたことなどがシェア上昇につながっている。

―― サプライヤーとの強固な関係も影響していますか。
 河合 当社は開発と製造を同じ拠点で行うことが他社にはない強み、特徴であると自負しており、サプライヤーとの距離感が非常に近い。特にこの2年間はSPE業界でも部材不足が深刻になったが、当社はPOR(Process of Record=顧客側ラインでの承認)だけでなく、納期対応においても有利に事業を進めることができたと考えている。
 当社は年2回、各拠点でサプライヤー企業に対して生産動向説明会を実施しているほか、12月には「パートナーズデイ」も開催して、コミュニケーションや接点を増やす取り組みを意識的に行っている。こうした取り組みや産業クラスターを生かした強みなどが評価され、22年度の「ポーター賞」(主催:一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻)も受賞することできた。

―― 生産・調達の部分で大事にしていることは。
 河合 各工場でそれぞれ強みがあるほか、これまで培ってきた文化もある。コーポレートとしてはある程度共通化していく部分はあるものの、それぞれの特徴を尊重していくことが重要だ。例えば、コーター/デベロッパーを手がける熊本工場(東京エレクトロン九州)はユニット単位でサプライヤーに委託するケースが増えるなど、生産と開発の分業化が進んでいるが、エッチング装置を手がける宮城工場(東京エレクトロン宮城)ではユニット組立も自社工場内で行うなど、それぞれ特色がある。

―― わかりました。短期的な見通しをお聞かせ下さい。
 河合 確かに短期的な市況は調整段階になっているものの、デジタル化と脱炭素化という中長期での成長トレンドは変わっていない。当社も22年度通期予想に関しては下方修正を行った。ただ、半導体の成長サイクルは乱高下が少なくなるなど、シクリカリティーは従来に比べて低下しており、ダウンサイクルでも大きく低下せずに、いわゆる「階段状」の成長を遂げることができるようになってきている。

―― それはなぜですか。
 河合 デジタル技術が積極的に活用される時代となり、半導体の用途が一段と広がっていること、それに伴い、高速化や大容量化、そして低消費電力化など技術革新が一層求められることが一番の理由だ。また、半導体メーカーの寡占化が進んだということもある。勝ち抜いたグローバル企業は利益やキャッシュフローを重視している。高いマーケティング能力で需給バランスをウォッチすることによる適切な投資がサイクルの安定化に寄与している。今後も本格的なサービスが期待されるメタバースや、新規・入れ替え双方のサーバー投資が期待されるデータセンター、スマートフォンの需要回復などで半導体およびWFE市場は徐々に回復、そして拡大していくとみている。

―― 次の成長サイクルに向けた取り組みや準備は。
 河合 次の立ち上がりに備えて、この一息つけるタイミングでいろいろ準備して、体質強化を図っていきたい。特にメモリーなどは投資再開の時に一気に需要が来るので、サプライチェーンの構築をより強固にしていくつもりだ。あまり近視眼的にならずに中長期で物を考えていく。

―― 最後に今後の中長期での展望を教えて下さい。
 河合 22年6月に発表したとおり、26年度(27年3月期)に売上高3兆円以上、営業利益率35%以上(1兆円以上)、ROE(自己資本利益率)30%以上を達成する財務モデルを公表している。東証プライム市場には約1800社が上昇しているが、売上高3兆円以上、営業利益率35%以上、営業利益1兆円以上をすべて満たしている会社はゼロであり、これを初めて達成する会社となれるよう挑戦しているが、これもあくまで通過点だと考えている。30年に半導体市場1兆ドルという長期予測に向けて、我々もまた一段と成長していければと考えている。

(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2023年2月2日号1面 掲載

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