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第527回

(株)デンソーウェーブ 執行役員 FAプロダクト事業部 事業部長 神谷孝二氏


高速人協働ロボットを本格展開へ
高難度作業での採用事例が拡大

2023/6/2

(株)デンソーウェーブ 執行役員 FAプロダクト事業部 事業部長 神谷孝二氏
 (株)デンソーウェーブ(愛知県阿久比町)にて、産業用ロボットなどを扱うFAプロダクト事業が好調に推移している。電動車やエレクトロニクス関連の製造現場に加え、ラボ作業などの高難度な領域でも採用が拡大しており、高速人協働ロボットの本格展開に向けた取り組みも進めている。今回、同社の執行役員でFAプロダクト事業部事業部長の神谷孝二氏に話を伺った。

―― 直近の需要動向から伺います。
 神谷 産業用ロボットを扱うFAプロダクト事業部は近年、自動化ニーズの高まりなどを受けて継続して成長しており、2022年度(23年3月期)についても2桁の事業成長を達成した。分野別でみると、バッテリーを含めた電動車関連の領域で需要が拡大しており、半導体関連も伸長している。また、人協働ロボット「COBOTTA」(コボッタ)がラボ作業の自動化に活用されるケースが増えるなど、ロボットがあまり活用されていなかった領域でも採用が増えている。

―― そのほかの傾向は。
 神谷 従来の技術では自動化が難しいとされていた作業、例えば、ワイヤーハーネスのハンドリングなどを自動化した事例も出てきている。こうした事例を実現できた1つの理由が当社の「AI模倣学習」という技術にある。ロボットの動きと複数のセンサーの情報をAIが学習するソフトウエアで、言語化・プログラム化が難しい勘やコツといった作業者の経験に基づいた作業を再現できる。AIやコンピューターの専門知識を持たなくても、自動化したい作業内容を理解しているユーザーが簡単に利用できるように設計されており、プログラムによるロボット動作生成とAIによる動作生成を組み合わることもできる。

―― 製品面での取り組みは。
高速人協働ロボット「COBOTTA PRO」
高速人協働ロボット「COBOTTA PRO」
 神谷 高速人協働ロボット「COBOTTA PRO」(コボッタプロ、最大可搬重量は6kgと12kg)に関する取り組みを強化している。COBOTTA PROは、作業者が近くにいないときは動作速度を最大化し、作業者が接近した際に減速して停止に必要な距離を最小化する。また、各軸には独自開発したトルクセンサーを標準搭載し、かつシリコン緩衝材に高感度接触センサーを組み込んだタッチセンシングソフトカバーを装着することで、優れた安全性を実現している。一方で最大TCP速度2500mm/s(12kg可搬タイプの場合)で動作することもでき、こうした優れた安全性と生産性を両立している点が大きな特徴で、協働時にも素早い加減速を実現して優れたタクトタイムを実現できる。


―― そのほかの特徴や現在の取り組みについて。
 神谷 簡単にティーチングや操作が可能で、簡単にプログラミングできる新しい開発環境も提供している。そのため、ラインの変更や変種変量生産にも柔軟に対応できる。現在、デンソーグループ内の生産拠点において約50台導入し、組立作業などで活用しながらノウハウを蓄積している。それとともに2月ごろから一部のお客様に向けて出荷も開始しており、23年度から本格展開を進めていく。

―― 注力されていることは。
 神谷 周辺機器メーカーとの連携を重要視しており、例えば、Mech Mind社の産業用3D知能カメラに、当社が開発した専用GUIを搭載した3D画像認識システム「Mech-Eyeシリーズ」などを展開している。また、当社のロボットコントローラー「RC9」は、様々な技術を融合できるオープン性と、システム全体をシンプルに統合できる拡張性を兼ね備えており、ロボットと周辺機器をリアルタイムで統合制御でき、ロボットの活用拡大に向けてRC9を核にしたソリューションの拡大にもさらに取り組んでいきたい。

―― 23年度の見通しについて。
 神谷 世界経済の不透明な部分が多い状況ではあるが、自動化・省人化ニーズは依然として高く、23年度も2桁成長を目指していきたい。そのために、自動車部品やエレクトロニクス領域といった主力市場での導入の拡大を目指すのはもちろんのこと、既存のロボットユーザーのなかでも自動化されていない高難度の領域への提案を強化するとともに、三品産業などのロボットの活用が進んでいない業種への提案も進めていく。また、COBOTTA PROの本格展開も大きなテーマとなる。そのほかの取り組みとして、FAプロダクト事業部ではIoTソリューションの取り扱いを22年度から開始した。これにより製造現場におけるデータの収集・管理などまで踏み込んだ提案も行えるようになっており、こうした取り組みもさらに加速していきたい。

(聞き手・副編集長 浮島哲志)
本紙2023年6月1日号9面 掲載

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