電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第543回

(株)ネクスティエレクトロニクス 代表取締役社長 柿原安博氏


ソフトウエア内製化を推進
サプライチェーンを可視化へ

2023/9/22

(株)ネクスティエレクトロニクス 代表取締役社長 柿原安博氏
 豊田通商グループのエレクトロニクス商社として、(株)トーメンエレクトロニクスと、豊通エレクトロニクスが合併して誕生した(株)ネクスティエレクトロニクス(東京都港区)は、設立から7年目を迎えた。非上場ゆえ見えづらいが、半導体商社ランキングトップ3の一角を担う。豊田通商、豊通エレクトロニクスなどでの要職を経て、2022年4月から同社を率いる代表取締役社長の柿原安博氏に、市況感や強み、最新の取り組みなど幅広くお聞きした。

―― 業績について。
 柿原 22年度(23年3月期)連結売上高は前年度比17%増の5188億円を達成し、23年度も増収を見通している。円安も奏功しているが、為替影響を除いた場合でも、車載向けもイメージング機器などの産業機器向けも堅調に推移しており、増収を果たせている。なお当社売上高のうち車載向けは約8割、産業機器向けは約2割を占める。

―― 市況感は。
 柿原 半導体不足は22年末ごろから解消され、一部の特殊な部品を除いては、足元(8月下旬時点)は半導体在庫が少しずつ増え始めている印象だ。半導体供給不足時の発注はノンキャンセル前提であったため、当面在庫は増えていくだろう。自動車向け需要は引き続き堅調であるが、ディーラーの受注が中国で減速しており、特に日本勢が影響を受けているようだ。スマートフォン(スマホ)もボリュームゾーンの中国、インドで需要は弱含んでおり、すでに普及率も高く今後も需要増は期待しにくい。

―― 電動車、自動運転向けの開発が活発ななか、貴社の強さや果たす役割は。
 柿原 パワー半導体から自動運転向けSoCなどを担う外資系主要半導体メーカー商材をほぼ取り扱っており、さらに電子部品、プリント基板、パネル、材料などクロスセリングできる豊富な商材、技術・品質サポート力が強さの1つである。また昨今は、自動車メーカー(OEM)も加わり、半導体サプライヤーと直接議論することも多い。こうした場面で、当社の各サプライヤーとの長年の信頼関係が活き、最適な直接交渉の環境提供に貢献できている。また、半導体を熟知しているからこその各種可否判断でも一役を担っている。

―― SDV(Software Defined Vehicle)に向けた対応も必須です。
 柿原 ソフトウエア人材の内製比率を高めており、デンソーとの合弁会社「豊田通商デンソーエレクトロニクスタイランド」、東芝デバイスソリューションとの合弁会社「ネクスティシステムデザイン」などを設立済みだ。品質の担保も含めて、ソフトウエア人材の内製力が効いてくるとみる。また、当社が幹事会社のソフトウエア標準化団体「JASPAR」の活動もセキュリティー、OTA(Over The Air)、SDVと活発化しており、各社との協調領域は増える一方にある。中長期の自動車業界の未来図も見え、当社にも相乗効果をもたらしている。

―― 新たな取り組みについて。
 柿原 サプライチェーンの見える化に挑んでいる。各商材のトレーサビリティーを詳細に把握することで、事前にリスク予知して対策を講じられる。また、欧州のCatena-X、日本(経済産業省推進)のウラノス・エコシステム、米国のNOBIなど世界各国でも、CO2排出量などの側面も含めて各種トレーサビリティーが重要視されており、当社は先んじて対策に取り組んでいる。

―― 半導体商社では上位の一角です。
 柿原 豊田通商グループにおけるエレクトロニクス関連商社では、当社、トーメンデバイス、エレマテックの3社合計で約1.1兆円強の売り上げ規模にある。豊田通商グループにはネットワークのITインフラや再生可能エネルギー関連などを手がける商社もあり、こうしたグループ会社とのシナジーを活かせば、さらなる伸長の余地も十分にあり得る。たとえば、データセンター向けへのアプローチも一案だろう。グループ間連携なども活かしながら成長を続けていく。

―― 座右の銘を。
 柿原 「やれません、できません」を言わない。大学時代のサッカー部監督の口癖だった「打てば百点、入れば万点」という言葉も信条にしている。現場に立ち続け、トライし続ける。社員も挑戦心を大切にして業務に挑んでくれることを願っている。

(聞き手・高澤里美記者)
本紙2023年9月21日号1面 掲載

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