パワー半導体をはじめアナログIC、マイコンなどの半導体ならびに大容量のニアラインHDDを両輪として事業展開する東芝デバイス&ストレージ(株)(川崎市幸区)。AI需要の急激な拡大を受け、反転攻勢を強める。昨年11月に同社の代表取締役社長に就任した牛島知巳氏に、足元の市況ならびに2026年度の事業展望を聞いた。
―― ご略歴から伺います。
牛島 1992年に東芝に入社後、無線ICなどの素子・デバイスなどを皮切りに開発・製造に取り組んできた。その後、大分工場などの生産現場と本社を行き来し、16年にはセミコンダクター&ストレージ社でミックスドシグナル事業部の製品技術部長の職を務めた。25年11月には、(株)東芝の上席常務執行役員に就任、デバイス&テクノロジービジネスセグメントの責任者に就き、経済安全保障の責任者も兼任している。
―― 足元の半導体の市況をどうみていますか。
牛島 当社も例外なくAI需要拡大の恩恵を受けている。パワーMOSFETなどのパワー半導体をはじめ、フォトカプラーなどの光半導体、アナログ/マイコンなどのロジックICと実に幅広い製品群を取り扱っているが、AIに関連する製品は好調だ。データセンター(DC)周りでは旺盛な需要がきており、特に電源向けパワーMOSFETへの引き合いが強い。また電力関連のパワーグリッド領域も活況だ。一方で、レガシーノードのデバイスは、車載をはじめ産業/民生機器向けは動きが鈍い。生産面で少しずつ改善傾向が出てきているが、直近のピークであった22年度には届いていない。
―― 各拠点の稼働率は。
牛島 加賀東芝や姫路、タイで最近立ち上げた生産ラインは、おおむね右肩上がりで生産量が増加している。近い将来、フルキャパに引き上げたい。
―― 26年度以降の事業展望について。
牛島 引き続きAI関連向けに、当社が強みを持つパワーMOSFET、フォトカプラーやフォトリレーなどに期待している。先端テスター向けなどにも旺盛な需要がきている。GaNの開発にも注力している。ノーマリーオフ型の26年度以降の製品化を目指しており、次世代デバイスの開発も強化している。パワー半導体は現在、半導体事業の3割程度を売り上げているが、将来はさらに引き上げていきたい。
―― 増産対応は。
牛島 引き合いが強い低耐圧パワーMOSFETは、加賀東芝でウエハー生産能力を拡大している。ボトルネックの改善などを通じて従来比15%ほど能力を向上させる。また、当社が独自開発したIEGT(Injection Enhanced Gate Transistor:注入促進型IGBT)の受注も高水準だ。8インチウエハーを使い製造している。ハイパワー系の変圧器用に、高信頼性のスイッチング性能を提供する。当社は電鉄や電力などインフラ向けの基幹デバイスにも貢献しており、関連デバイスを今後とも強化する。
―― ニアラインHDD事業も好調です。
牛島 生成AI対応DC向けの大容量HDDは、非常に強い需要がある。主力拠点のフィリピンで増産対応を継続中だ。足元では、ニアライン市場の容量需要は20%近い成長が期待できる。当面は強い需要が継続する見通しだ。引き続き大容量化のニーズが高いため、次世代のMAMRやHAMR技術を使った新製品の開発も並行して進めている。早ければ27年度中にも40TB品の市場投入を計画する。
―― 今後、どう成長を加速させていきますか。
牛島 東芝本体の成長戦略と連動させることでまだまだ伸ばせる分野がある。グループには耐久性の高いLiBのSCiBやロボット・ドローン技術などセキュリティー・防衛関連、インフラといった安定して成長できる分野がある。パワー半導体の単品販売ではなく、駆動系デバイスやマイコンなどと組み合わせたソリューション販売で成長を加速したい。
―― ロームとの半導体事業統合に向けた協議に、三菱電機も加わりました。
牛島 ロームとは半導体事業の統合を含む提携強化に向けた協議を行っている。ますます重要となるパワー半導体で、世界で戦っていくためには一定のシェアや技術基盤を確保していることは大事だ。事業統合の協議について、現時点で決まったことは何もないが、今後の当社の半導体事業の価値を最大化し、顧客への製品・サービス提供については従来以上にご満足いただけるように取り組みたい。そのためにあらゆる選択肢や可能性を検討していく。
(聞き手・特別編集委員 津村明宏/野村和広)
本紙2026年4月16日号1面 掲載