電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第691回

シチズン電子(株) 代表取締役社長 渡邊 昭氏


磁気センサーで新領域開拓
国内生産力の再構築を推進

2026/8/21

シチズン電子(株) 代表取締役社長 渡邊 昭氏
 シチズン電子(株)は、長年培ったLEDパッケージ技術とメカトロ設計力を基盤に、既存3事業の強化と新領域の開拓を進めている。その一環として、エポックメーキングな磁気センサースイッチを開発し、3月からサンプル出荷を開始した。シリーズとして本格展開する構想を掲げ、新製品の開発・採用も進み始めた。代表取締役社長の渡邊昭氏に、事業全体の現状と今後の製品戦略を伺った。

―― まずは足元の事業状況からお願いします。
 渡邊 2025年度(26年3月期単体)の売上高は約100億円で、26年度は横ばい~微増での着地を見込む。当社は、①照明用LED、②チップLED、③スイッチ事業の三本柱で展開している。①は当社の基軸事業と位置づけ、27年度に25年度比1.3倍の売上高を目指す。国内では蛍光灯生産の終了に伴い、店舗の新築・改装でダウンライトやスポットライトへの更新需要が高まり、当社のCOB型LEDが強みを発揮する領域が広がっている。また、北米市場では、大手メーカーの内製化で一度失ったシェアを、技術優位性を訴求したプロモーションで回復しつつあり、27年には成長の手応えが得られる見通しだ。

―― ②については。
 渡邊 車載用ディスプレーのバックライト(BLU)向けと、ゲーム向けをメーンに展開している。BLU向けが価格競争で縮小する一方、ゲーム向けは開発段階から顧客と組める体制により堅調に推移している。2社供給が前提の製品では尖った技術が採用されない場合もあるが、その際は顧客の別の高機能品で採用されるなど、実績を重ねている。将来的に、BLU向けの事業規模は減少傾向となる見通しで、新製品で補っていく方針だ。

―― ③は。
 渡邊 スマートフォン(スマホ)やスマートウオッチ向けが中心で、当社の技術を認めていただける顧客との取引に絞っている。現在は、それら顧客向けに世界最小クラスのスイッチを開発中だ。一方、スマホはコモディティー化が進み、価格優先・2社供給前提の市場となっているため、既存スイッチで大きな成長は見込んでいない。このため、新規開発した磁気センサースイッチを次の成長軸に位置づけて事業拡大を図る方針だ。

―― 新製品が成長軸となるのですね。詳細を。
 渡邊 磁気センサースイッチは、クリック感を持つスイッチ機能と押し込み量を連続検出するセンサー機能をあわせ持つ点が特徴で、既存スイッチの枠を超えた提案が可能になる。すでにモバイル以外のプロユース市場で採用が検討されており、スマホ/電子ペン/スマートウオッチ向けと、PC/ゲーム向けの2製品を展開している。直近では、展示会で得た新規顧客の要望を受け、ストローク量を確保した縦長・厚型タイプも開発した。磁気センサースイッチシリーズは31年度に25億~30億円規模の事業へ育成する計画だ。
 もう1つはSWIR光センサーだ。物質ごとに異なる透過・反射特性を利用し、透明な液体などを非接触で判別するデバイスとして、産業・医療用途での展開を想定する。危険物や毒物を試薬なしで安全に識別できる可能性があり、当社のパッケージ技術で付加価値を高める。26~27年度の2年間で、単体デバイス販売もしくはアプリケーション提供までを含めるかなど、パートナー選定を含めたビジネスモデルの見極めを進める方針だ。

―― 生産体制について。
 渡邊 本社工場(山梨県富士吉田市)、100%子会社のシチズン電子タイメル本社工場(山梨県富士吉田市)、境川事業所(山梨県笛吹市)、中国工場の4拠点で対応している。境川では照明用LEDとBLU向けチップLEDを生産するほか、BCP対応として中国で量産しているゲーム向けLEDの国内生産にも乗り出す計画だ。中国依存が続けば国内のものづくり力が劣化するとの危機感を持っており、境川において生産技術の技術革新メンバーを中心に既存品での生産合理化を進め、中国と同等コストでより多く作る体制づくりを進めている。DXによるレイアウト最適化や協働ロボット導入で効率化を図り、生産技術チームの士気も高まっている。
 さらに、これにより得られた生産技術・プロセスの知見を新製品の量産に活かしていく方針だ。磁気センサースイッチの事業化では、開発・生産技術・品質保証・製造・営業の部門長級を束ねたタスクフォースを編成し、これまで活用してこなかった商社との連携で市場開拓力の強化を図りつつ、LEDの技術革新メンバーが設備設計や量産ライン立ち上げを兼務するなど、部門横断の協力が進んでいる。また、私自身が前職でIRモジュール設計を経験しており、電気回路やIRセンサーに関する知識を新事業に活かしていく考えだ。



(聞き手・澤登美英子記者)
本紙2026年8月20日号4面 掲載

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