電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第702回

ミネベアパワーデバイス(株) 代表取締役社長 鈴木雅彦氏


鉄道向けIGBTが好調
800V直流化で事業機会

2026/11/6

ミネベアパワーデバイス(株) 代表取締役社長 鈴木雅彦氏
 ミネベアミツミグループでは、2028年度に半導体事業で売上高2000億円、営業利益率30%以上の達成を目標に掲げている。このうち、ミネベアパワーデバイス(株)は売上高約700億円を担う。代表取締役社長の鈴木雅彦氏に事業、製品戦略などを伺った。

―― 事業状況から伺います。
 鈴木 24年度から25年度にかけて大きく伸びた反動もあり、25年度は前年度比微増の業績だった。しかし、そのなかで売上高が初めて500億円を超えたことは大きな節目となった。エアコン向け高圧ICが好調で、鉄道向けIGBTがインド市場で急拡大した。特にインド向けは計画の約2倍の伸びとなり、25年度はフル生産が続いた。鉄道向けIGBTは欧州向けが約半分を占め、インド、北米、日本と続く。成長率ではインドが突出しており、欧州、北米、日本は年率1桁台前半にとどまっている。今後もインドの伸びに期待している。
 一方で、ガソリン車向けが中心のダイオード製品は計画どおりに縮小し、EV向けは特定車種の計画変更により寄与が限定的となった。これらにより、25年度は微増ながら過去最高という着地になった。

―― 今夏はエアコン市場が不調と聞きました。
 鈴木 25年後半から急速に市場が悪化している。要因は3つで、中国の補助金の大幅削減による買い控え、中東情勢悪化による中国からの輸出需要の減少、そして経済の冷え込みだ。顧客のなかには2桁以上のマイナス成長となり、工場を半月ほど止めるケースもみられた。さらに、下降局面でのブレーキが遅れたため在庫が積み上がり、回復の兆しが見えない状況だ。この影響は27年度に持ち越すと見ている。今夏は欧州で熱波による需要増があったが、全体からすると寄与はほぼ限定的だ。しかし、長期的には確実に持ち直す市場と見て、ここ1~2年は我慢の年と考えている。

―― AIデータセンター向けで新しい事業機会はありますか。
 鈴木 データセンターの電力インフラが、800V DC(直流)化へ向かう動きがあり、ここに事業機会が生まれている。現行の電力インフラの一般的な構成は、送電→変電設備(変圧器含む)→無停電電源(UPS)→サーバー側DCへ変換という多段構成になっている。このうち、当社のパワー半導体(IGBT、SiC)が使用されるのはUPS部分のみで、これまでの構成では強みを活かせなかった。
 これに対し、エヌビディアなどが主導するかたちで検討されているのが800VDCへの転換だ。電圧を上げて電流を下げることで発熱を抑えるのが狙いだ。送電から早期に800VDCへ電力変換し、大容量バッテリーを備えたDC配線で、サーバー近傍までDCのまま配電するかたちになる。この場合、系統側でのAC→800VDC変換に大電力のIGBT/SiCブリッジ回路(1.2kV~6.5kV級の高耐圧デバイス)が必要になり、これはまさに当社が鉄道向けで培ってきた領域と一致する。効率が1%改善するだけでもシステム全体のロスは大きく減り、排熱・冷却設計にも直結するため重要性が高い。この分野は、まだシステム側も最終的な方式を決定していない段階だ。すでにサンプル要求がきており、29~30年度での製品立ち上がりを想定している。
 さらに、半導体遮断機の需要も期待される。大容量バッテリーならびにサーバーをサージから守るには、ミリ秒動作の機械式遮断機では不十分で、半導体遮断機によるマイクロ秒での遮断が求められる。1.7kV、3.3kV級SiCを供給できるプレーヤーは当社を含め少数だ。

―― 26年度の見通しについて。
 鈴木 エアコン市場の不調を受け、業績は前年度比横ばいの見込みだ。需要のブレーキが数カ月で効いてしまうのに対し、新しいプラットフォームの投入には2~3年単位の時間がかかり、この間にコスト圧力が強まるため、製品戦略上の柔軟な対応が必要だ。
 具体的には、従来のエアコンの室内機向けだけでなく、電力の大きい室外機やコンプレッサーなどのハイパワー領域に参入する。その一環として、26年2月にサンケン電気とのインテリジェントパワーモジュール(IPM)の共同開発を発表した。原町工場(福島県南相馬市)内に後工程ラインを新設する。量産開始は27年度の予定だ。26年度は踊り場となるが、IPMでの協業は、28年度に掲げる数値達成に向けた主要施策である。



(聞き手・澤登美英子記者)
本紙2026年11月5日号1面 掲載

サイト内検索